農業の年収と採算は?
Last update 2013/05/15 06:32
最近、会社で若い子と接していると、自営業や農業にすごく憧れている子が多いことが判明しました。私は自営で、実家の畑仕事も手伝っているので、こうした話をすると目を輝かせながら、「いいですね~」「いいなぁ。」なんて言ってくる子が多いんです。
ただ、どうも今の仕事やサラリーマン生活が嫌で、そういった自由奔放そうに見える(見えるだけなんですけれどね)生活に憧れているだけのような気がします。
夢を打ち砕くつもりではありませんが、自営業をやっている私から言わせてもらうと、自営業でやっていける人は、普通の仕事が人並み以上に出来る人であり、今の仕事や生活から抜け出したいから個人事業主になりたいと思っているような人には、ほぼ無理ということ。
実際に私の場合も、退職しようとしたら会社から引き止められることが多く、同僚の中でも1~2位を争う成績、ミスの少なさでした。
お金に対する情熱はなくても構いませんが、すべて一人でやらないといけないリスクと手間はかかります。
採算は合う?
農家の平均的な年収は、150~300万円程度で、サラリーマンに比べてずっと低いそうです。
うちの実家もそうでしたが、ほとんどが兼業農家なんじゃないかと思います。
農業は初期投資がすごく高く、苗や肥料の購入、燃料、農薬などコストも掛かるため、最悪収穫できないと赤字になる可能性もあります。
うちの地域では、専業農家はほとんどいず、たいていは兼業農家か、自分とこで食べる程度を作っている程度です。
うちは昔、田んぼも所有していて、畑も大きく、まさに兼業農家だったので、うちの親父になんで農業をやるのか聞いたところ、やらないよりやれば多少なりとも収入になるから、と言っていました。
別にやらなくても構わないが、土地があるなら手間さえかければ、多少なりとも収入にはなるから、ということらしいです。
初めて行ったがん検診で、コレステロール値が異様に高いと言われて、対策を聞いたところ、お菓子やインスタント食品などを控え、野菜を十分取り運動をするぐらいしかないと言われ、週に2~3回、近所のスーパーに野菜を購入しにいくのが日課になりました。
また、去年(2012年)から親父の畑仕事を手伝うようになり、ますます野菜に興味をもつようになったんですけれど、意外とインターネットでは畑仕事に興味を持っている人が多く、ベランダ菜園や都会から地方に移り住み、畑仕事に性を出している人もたくさんいることがわかりました。
太陽光発電もそうですが、畑仕事やベランダ菜園も、採算性から興味をもつ人が多いことも判明しました。
かく言う私も、野菜を収穫するときに「これだけ採れたから、スーパーで購入した場合に比べ、◯◯円得をした」なんて、初めの頃は計算してしまいましたが・・・。
今までの最安値 | 一般的な価格 | |
---|---|---|
レタス | 77円 | 250円 |
キャベツ | 120円 | 220円 |
トマト(5個) | 198円 | 398円 |
玉ねぎ(4個) | 90円 | 198円 |
上の表は、私が最近スーパーで購入した「最安値」と「一般的な価格」です。季節によって、地域によって違ってくるかと思いますが、万遍なく全て購入するより、安い野菜のみを購入するような買い方をしています。
レタスは3~4月に、77円まで値下がりしたので、しばらくずっとレタスばかり食べていました。(笑)
基本的に手間がかからない野菜は安く、手間がかかったり台風など災害のリスクが高い野菜は高くなります。
例えば、秋に植える玉ねぎなんかは植えたら最後、ほとんど世話は必要ありません(2回、窒素肥料を与えた程度)。
畑だと、水やりの必要はほとんどなく、9月以降(玉ねぎは9月の上旬に種を蒔きます)は、雑草がほとんど生えなくなるので、ほぼ放置です。
ただ、玉ねぎやネギは、植えてから採れるまで9ヶ月ぐらいかかる(白菜などは3ヶ月で収穫できる)ので、その間、他の野菜を育てることができないので、効率は悪くなりますが・・・。
人間関係が嫌で農業を始める
人間関係が苦痛で農業にあこがれる人も多いかと思います。が、農業は個人プレーで寡黙に行うものかと思っていたら大間違い。
隣近所の畑で作業をしている人のコミュニケーションは必須ですし、都会などでは近所の人と交流がなくてもやっていけますが、地方に行けば、色々なイベントや会議に参加する必要があります。
うちの親父もまつりやら、小学生の通学の見張り、地域の役員など、無報酬で参加しないといけないことがたくさんあって、人との交流はサラリーマン以上だと思います。
畑仕事はスーパーで購入する場合に比べ得か
きっと農家になろうと思っている人にとって、最も興味深い点が、スーパーで購入した場合に比べ、どれくらい得なのか、または採算が合うのかということかと思います。
ただ、はじめに言ってしまうと、採算性を考えるのであれば、ベランダ菜園や畑で野菜を育てるのは、あまりおすすめはできません。
菜園に興味をもつきっかけとしては、この不景気にマッチした優れた点かと思いますが、残念ながら生活費を浮かせる目的で、自分で野菜を育てるのはあまり賢い選択ではないと思います。
かなり大きな畑で、大量に野菜を育てた場合は採算性も良くなってきますが、100坪とかベランダ菜園レベルだと、とてもじゃありませんがスーパーで購入したほうが安上がりだと思います。
まず、苗が高いです。種から育てれば安上がりになりますが、農家の人ですら、苗で購入するパターンは多いです。特にトマトなど。
で、例えばレタスの場合、苗で購入すると1本60~80円ぐらいします。
でも、うちの近所で最安77円でレタスが売ってたりするので、あまり変わらなかったりするんですよね。
ただ、77円というのはかなり破格の価格で、たいていはレタス1個250円ぐらいするので、苗から育てても充分得といえば得ですが、私なら安く売っテイルスーパーを探すことに労力を割いたほうが賢いと思います。
トマトやナスのような実がなるような野菜は、1本の苗で300円ぐらいします。
うまく実がなってくれれば、十分採算がありますが、台風などで全滅する可能性や、途中で枯れてしまうリスクを考えると、あまり得とはいえないと思います。
やさしい野菜からチャレンジ
親父の畑仕事を手伝って感じたのは、野菜によって手間がかかったり、難易度が高かったり低かったりすること。
また、ベランダなどの小さなスペースだとあまり採れないけれど、畑だと大量に採れるものがあるなど、植える野菜によって収穫数が違ってくること。
個人的にはすごく優しく、大量に採取できたのは「白菜」でした。
もう、びっくりするぐらい採れました。
しかも、手間は農薬を撒き、寒さ対策をした程度。
しかも大量にできたので、料理も他の野菜の代わりに白菜で済ませることも可能。
食費はだいぶ浮いたと思います。
ところが同じ品種をベランダで鉢植えしたところ、結局1つも丸まることはなく、このような別の野菜かと思ってしまうぐらいしか、成長しませんでした。
これは鉢植えという小さなスペースだったのと、肥料をあまりあげなかったので、途中で成長が止まってしまったんだと思います。
野菜1つあたりの土の量と、化成肥料は非常に成長を左右することが判明しました。
また、白菜よりレタスは難易度が多少上がり、畑でもやはりこのように丸まらないでとう立ち(花が咲いてしまうこと)してしまったものもありました。
ネギなんかは手間がかかる野菜の代表格。以前もネギの土寄せという記事で土寄せの方法を紹介しましたが、ネギは成長に合わせて伸びた部分を土で覆ってやる必要があります。
また玉ねぎと一緒で、非常に成長が遅いのも特徴。
ただし、密集して育てることができるので、省スペースで大量に育てることができます。
農薬も野菜を育てる上で必要な作業。
葉っぱを食べる野菜では、農薬は必須。
ベランダではあまり虫にやられることはないような野菜でも、畑では害虫対策は大事な作業の1つ。
ただ、里芋やじゃがいも、玉ねぎ、ネギのように地中に埋まった根を食べるような野菜は、逆に農薬はほとんど必要がありません。
比較的手間がかからない野菜
- 白菜
- 種から育てることができ、秋にまくため、雑草や水やりの手間は殆どかからない。ただし、アブラムシなど害虫に最も弱い野菜なので、農薬は必須。
霜が降りるぐらいの季節になると、霜でやられないように、葉をまとめててっぺんをひも(藁など)で縛ってやる。
11~3月頃まで収穫ができる。
ベランダのようなプランターや鉢植えだと、丸まらないことが多い。
農薬を使う必要があるので、優しいものの、高度な知識も必要。
- 種から育てることができ、秋にまくため、雑草や水やりの手間は殆どかからない。ただし、アブラムシなど害虫に最も弱い野菜なので、農薬は必須。
- 玉ねぎ
- 夏の終わりに種を蒔くので、水やり、雑草などの手間がかからない。
害虫も殆どつかないため、農薬は必要なし。
狭いスペースで大量に植えることができる。
プランターでも充分。
スーパーでももともと安い。
- 夏の終わりに種を蒔くので、水やり、雑草などの手間がかからない。
- じゃがいも
- 一度植えたら、ほぼ手間は必要なし。
ただし、じゃがいもが土から出てしまうので、数週間おきに土をかぶせる必要が有る。
農薬はほとんど必要なし。畑の場合、水やりもほぼ必要なし。
雑草が生え始める7月には収穫できてしまうので、雑草除去の必要もほぼなし。
大きなプランターや土のうのような袋で、ベランダや庭でも栽培可。
- 一度植えたら、ほぼ手間は必要なし。
- ほうれん草・小松菜
- 秋に植えた場合、マルチ(ビニールで土おおおう)を使う。
害虫に弱いので農薬は必須。
密集させることができるので効率は良い。
それ以外はほぼ放置でOK。ただ、採取期間が短いので、採算性はあまり良くない。
- 秋に植えた場合、マルチ(ビニールで土おおおう)を使う。
- さつまいも
- 農薬はほとんど必要ない。
大量の葉で地面を覆うので、ほとんど雑草が生えてこない。
あまり失敗がなく、大量にとれるので効率がいい。
収穫後、長持ちするので採算性も高い。
- 農薬はほとんど必要ない。
栽培が難しいもの
- レタス
- 意外と丸まらない。
病気や害虫に弱い。
個人的には、最もチャレンジしたい野菜。
種から植えることができ、春と秋の2回育てることができるので、効率がいい。
- 意外と丸まらない。
- ネギ
- 栽培期間が長いが、密集して植えることができ、害虫や病気にも強いので採算性は非常に高い。
土寄せの必要があるので、手間は多少かかる。
そもそもあまり大量に作っても、料理としてはそれほど使わないので、スーパーで購入したほうがいいかも?
- 栽培期間が長いが、密集して植えることができ、害虫や病気にも強いので採算性は非常に高い。
- トマト
- 雨や病気、災害に弱い。台風で全滅する可能性あり。
畑よりベランダのほうが向いている野菜。
難易度は高いが、価格も高いので自家栽培でも採算がとれるかも。
畑の場合、こまめな脇芽欠きが必要。
真夏から秋まで収穫できるため、雑草対策が必要。
個人的には、最もチャレンジしたい野菜のひとつ。
- 雨や病気、災害に弱い。台風で全滅する可能性あり。
実際にいろいろな野菜を育ててみて感じたのは、初めて畑で野菜を育ててみようという人には、「じゃがいも」「さつまいも」が最もやさしくおすすめ。
じゃがいもは芋ができてくると、地面から芋が顔を出すようになるので、1~3週間に1度、土を被せる必要があります。じゃがいもは日光に当たると、ソラニンという苦味が発生し緑色になるので、土をかぶせることで、ソラニンの発生を防ぎます。
手間といえばこれぐらい。
白菜やほうれん草など、秋にまく野菜は放置しておいても育ち、初心者向けですが、害虫に弱いので農薬が必要になってきます。
農薬散布の経験があれば、それほど手間ではありませんが、初心者には敷居が高いかも。
散布用のポンプなども購入しないといけないし。
ベランダで育てる場合は、「玉ねぎ」と「トマト」がオススメ。玉ねぎは気温が高いベランダのほうが成長が速い気がします。
また、秋から冬にかけては雨も多く、水やりはほぼ必要なし。肥料もやり過ぎるといけないほどなので、プランターに蒔いたら、放置でも育てることができました。
また、野菜はかなり大きなプランターでないと、うまく成長しませんが、玉ねぎは普通のプランターで充分。
トマトは難易度が高いのですが、ベランダ菜園では最も人気が高く、ネットで色々調べることが出来るのと、手間がかかる分、楽しめるという点で、オススメです。
私も畑仕事を始める切っ掛けがトマトだったので、いきなりトマトにチャレンジしてもいいかも。
ただ、畑で育てる場合、台風や雨に弱いので、直撃を食らうと全滅する可能性があります。
料理ができる人のほうが効率がいい
うちの親父のように、料理ができない人が野菜を育てようとすると、必ず大量に植えすぎて、食べきれない状態になります。
うちの親父と近くの農家の人の会話を聞いていると、「せっかく作っても食べないんだよなぁ」なんてよく言っているんですけれど、作り過ぎだから!!
去年、白菜は100本ぐらい植えたんですけれど、毎日1個食べたとしても、100日分採れるわけです。が、料理ができる人ならわかると思いますが、毎日白菜を使った料理なんて、まず作らないでしょうし、漬物なんかは1個で1週間ぐらいもちます。
ネギだって、やはり100本ぐらい植えたんですけれど、私の人妻友達数人に話したところ、「ネギなんて、あまり料理で使わないよねぇ・・・」と失笑される始末。
ところが、ほとんど野菜を育てている人って、料理をしたことがない人がほとんど。
だから需要と供給が絶対合わずに、大量に余ります。
日本の畑では、狭いスペースを有効に使うために、どの土地も1年に1~2回、野菜が植えられます。が、実際には、1度野菜を植えたら、2~3年は何も植えずに土を休ませたほうがいいらしいんです。
なので、実際には3分の1から半分の量にして、あとは土地を休ませておくか、別の野菜を植えたほうがずっと効率がいいんです。
将来、農家になりたいとか、日曜菜園をしたい、なんて思っている人は、まず、料理も勉強しておくといいかもしれない。
もしくは奥さんも積極的に農作業に参加させる(何をどれくらい植えるか、の相談だけでも)といいかと思います。
農薬について
葉っぱを食べる野菜に関しては、農薬は必須です。ベランダ菜園程度であれば、アブラムシ対策も牛乳を霧吹きで吹きかける程度で済みますが、畑のような苗の数が多い場合は、農薬に頼らないと、場合によっては全滅してしまう可能性もあります。
ただ、「農薬=毒」というイメージがあるかもしれませんが、現在日本で使われている農薬は、散布から3日ぐらいで無毒になってしまったり、人間にはそもそも無害だったり、素人が思っている以上に安全らしい。親父は農業高校を卒業したのですが、かなり農薬については学校で習うらしく、昔に比べればだいぶ安全性は高まっているそうです。
ただ、スーパーや八百屋で売っている野菜は、害虫にやられると売り物にならないため、必要以上に農薬を使っていると聞いたことがあります。そのため、農家はほとんど売り物になった野菜は食べないそうです。(自分たち用に農薬を控えたものを別に育てている)
そういう点では、採算云々より、売っている野菜は安心できない、と自家栽培する人もいるかもしれません。
ベランダで育てた場合、こまめに面倒を見れば無農薬も可能かもしれません。
必要以上に農薬を心配する必要はないと思いますが、農薬が必要ない、じゃがいもやトマトのような葉っぱ意外を食べる野菜を食べれば農薬の心配はかなり軽減されるかもしれません。
化成肥料
畑って、ミミズやオケラなど、土を耕してくれる虫達が豊富なイメージがありますが、実はミミズなどはまったくいないんです。
どうも農薬だけでなく、化成肥料や高回転率で野菜を植えたりするのがよくないようで、いくら地中深く掘っても、出てくるのはヨトウムシやカナブンの幼虫のような害虫しか出て来ません。
化成肥料も人工的に作られた肥料なので、実際には体には良くないのかもしれません。が、化成肥料をあげないと、成長がぜんぜん違うんですよね。
もともと野菜は人の手が加わって、初めて食べるような形に育つので、肥料は必須なんで、難しいところなんですけれど・・・。
ちなみに私も勘違いしていましたが、腐葉土や堆肥ってほとんど栄養はないらしい。
ただ、土壌改良材として必要なんだそうです。
うちでは、苗を植える前に耕うん機で耕すのですが、耕す前に堆肥や石灰を撒いておき、耕うん機で土と混ぜるような感じ。
堆肥は比較的価格が安く、20リットルで300円程度で売っています。
採算が合うか
採算重視で野菜を育てると、多分続きません。
採算や食べることを目的に野菜を育てるには、手間暇を考えると効率が悪いです。
私のように普段、仕事をしていて休みの日に畑仕事をする場合、春から秋にかけては、休みの日はほぼ、畑に行かないといけなくなるので、植物を育てるのが好き、という人でないと向いていないと思います。
家の畑の隣の人は、定年後の趣味としていて、毎日のように畑に来ていますが、相当好きなんだろうな、と思います。
ただ、彼ほどになると、販売できるレベルの野菜も十分可能で、難易度が最も高いスイカでも、毎年上手に育てています。
ベランダ菜園程度であれば、本や独学で学んだ知識で充分育てることができますが、畑になってくると耕うん機の購入や使い方、農薬や化成肥料の使い方、霜よけや風よけの知識など、本にはなかなか乗っていない知識が必要になるので、将来農家になりたいと思っている人は、頻繁に講習会のような実地で研修できるようなものに参加しないと難しいかもしれません。
が、ベランダ菜園と違い、スーパーで購入しなくても間に合うぐらいの量が収穫出来ます。
本格的な農家になるには、かなりの時間と勉強を要するかもしれませんが、家庭菜園レベルであれば、近所の農家と仲良くなってアドバイスを聞きながらでも十分可能かもしれません。
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